訃報
2012/10/17
切り絵作家の成田一徹氏が、10月14日、脳内出血のためお亡くなりになられたそうです。63歳という若さでした。
成田さんは、バーを切り絵で表現することをライフワークにしておられ、モノクロの切り絵で、バーにおける躍動感や賑わいを巧みに表現されておりました。
また、私達バーテンダーのバイブルともいえる、「バーテンダーズマニュアル」の表紙も成田さんの作品で、私がバーテンダーになりたての頃から、一度はお会いしたい憧れの方でしたし、自分の店を持てたら切り絵にしていただくのが夢でした。
その憧れの成田さんに、まだ兄弟で一緒に始めたばかりのBar Atriumを、「サンデー毎日」に連載されていた「to the Bar」の2003年11月9日号に紹介していただいた時の感動は、今でも忘れられません。
その掲載以来、時々取材の帰りに寄ってくだるようになり、いつも興味深いお話を聞かせて下さいました。最後にお会いしたのは、スーパージャンプに「あの店に会いに行く」を連載するというお話をされていたので、もう3年以上も前になりますが…
いつか今の店舗も切り絵で描いていただけたら…と思っておりましたが、それは叶わぬ夢となってしまいました。
成田さん、素晴らしい作品を見せていただき本当にありがとうございました。あちらの世界でも素晴らしい景色を描いてください。謹んでお悔やみ申し上げます。
「サンデー毎日」2003年11月9日号「to the Bar」
切り絵・文:成田一徹
親子の絆
店に入ると一瞬、強い既視感におそわれた。バーカウンターへ至るアプローチといい、バックバーのバーナーで焦がした棚板の風合いといい、確かにどこかで見ている。
そうだ、これは湯島の名店「エスト」そのものではないか。「バー・アトリウム」を営むのは渡邉憲賢さん(37)と宗憲さん(33)兄弟。「エスト」の渡邉昭男さんのご子息である。店が瓜二つなのも道理だ。少年の頃から父親の仕事ぶりを見てきた。楽しそうな仕事だと思った。弟は町場のバー一筋に16年、兄はホテルのバーで13年。それぞれのキャリアを積んで、この5月から兄弟そろってカウンターに立っている。
父親の大きさをつくづく感じている。特に接客の素晴らしさは舌を巻く。2人の得意のカクテルをいただく。兄のギムレットと弟のダイキリ。ともにみなぎる自信を感じた。
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